
北欧の自動車メーカーと言えばボルボが有名ですが、サーブというメーカーも存在していました。スタイリングは独創的で、車の計器パネルには一風変わったデザインを採用しており一部の車ファンからは非常に人気のある車として知られています。ここではサーブの設立の歴史や現在をひもといてみました。
戦闘機を開発している会社が母体
サーブは1937年にスウェーデンの財閥グループ、ヴァレンベリ家の手によって設立されました。現在でも多用途戦闘機サーブグリペンEを開発・製造しています。社名も「Svenska Aeroplan AB(スウェーデン航空機会社)」の頭文字をとってSAABと名付けられています。サーブの自動車部門は、1947年に誕生しサーブオートモービルとして歩み始めます。1942年には航空機メーカーならではの発想と技術が投入されティアドロップ型の92001ボデイを発表しました。
サーブの名車
サーブは92001をベースに量産された92では、フロント横置きに搭載された水冷2サイクル2気筒エンジンには、25馬力という性能ながら、空気抵抗を局限したボデイにより最高速度が105km/hにまで達したといわれています。サーブが初めて量産した。92は1949年から1956年まで製造されていました。その後92をベースに開発された3気筒モデルの93や4気筒モデルの96は、モータースポーツで目覚ましい活躍を見せています。
92がティアドロップタイプ型の美しいスタイリングをしていたのに対して、もう一つ個性的なモデルがあります。それは、1967年に誕生した99です。
99は、その独特な形状からアメリカを中心に人気を博したモデルです。99に搭載されていたのは当時一般的ではなかったターボチャージャーを搭載していたことも人気の秘密でした。そしてこの99をベースに誕生するのがサーブを代表するモデル900です。形状は、基本的に99を踏襲しつつ、アメリカ国内における衝突安全基準をクリアするため900は全長を拡大しました。エンジンには、ターボエンジンと2.0L直4NAエンジンの2種類があり、ボデイの形状もガブリオレ、セダン、ハッチバッグの3タイプが存在しました。日本にも900は正規輸入され、その独創的なエクステリアとインテリアが注目を集めました。
1990年GM傘下へ
サーブは1990年にGM(ゼネラルモーターズ)の資本提携を受け、2000年に完全に子会社になります。GMの傘下になって以降のモデルにはGMの参加にあったオペルの影響を受けるようになってきます。
2008年に勃発した世界金融危機によりGMの破綻が決定すると、サーブはオランダのスパイカーズに売却されることになります。しかし、スパイカーズの経営不振によってまたもサーブは危機に陥ります。サーブはその後中国資本のスウェーデン企業ナショナルエレクトリックビークルススウェーデンに買収され、自動車メーカーとして再出発することとなったのです。
しかし、このメーカーでは、SAABというブランド名を使うことはなく、会社名のイニシャルであるNEVS というブランドで9-3エレクトリックをデビューさせました。これは、事実上のサーブブランドの消滅でした。しかし、スウェーデンの航空機メーカーから派生し、個性的な自動車で存在感を放ったサーブの姿は、EVという形になって今後の自動車史に新しい軌跡を残すことになるでしょう。